『サフランイエロー鮮やかなじり焼き ―私とじり焼き 前編―』

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竹田の郷土おやつ「じり焼き」の魅力を伝えていく、じり焼きプロジェクト。

竹田では、10月の終わり頃から11月頃までサフランが開花します。
竹田のサフラン栽培は、120年近くの歴史を誇り、生産量も全国の約80%を占める日本一の産地。
竹田方式と呼ばれる伝統的な栽培方法として、5月頃から開花するまで、球根を納屋など低温多湿の薄暗い場所に並べるので、
その開花は、華やかながらも、秘められた美しさとなっています。

竹田の郷土おやつ「じり焼き」の魅力を伝えていく、じり焼きプロジェクト。
今回は、そんな竹田の秘められたサフランの魅力も伝えたい!と、長年、竹田市恵良(えら)でサフランを栽培していらっしゃる阿南順子さんにじり焼きを作って頂きました。

実は、以前サフランのことを伺うためにお邪魔したとき、サフラン入りのじり焼きを作って下さった阿南さん。
これは竹田らしい郷土おやつ!と印象に強く残っていたため、今回作り方を見せて頂くことに。

キッチンで、ひと際目を引いたのが、黄金色眩しいサフラン水!
サフランの乾燥した花芯を、前日の夜から水につけて色を出したもの。
生産者さんならではのサフラン贅沢使い!
日常でもこんなに使っているのでしょうか?!と伺うと、「お客様が来たときのおもてなしだからよ。」と。
サフランの収獲や乾燥は、とても手間暇かかるものだからこそ、生産者さんも大事に扱っているのだそうです。

地粉と塩とサフラン水を混ぜて、生地の完成。
分量を尋ねると、「適当よ。いつもいい加減だから。」と笑顔で答える阿南さん。
いい加減は、善い加減。
長年お料理をされているお母さんのいい加減には、日々の積み重ねと食に込められた愛情を感じます。

いつもは卵焼き用のフライパンで焼いて巻くとのことですが、今回は、撮影用にホットプレートで焼いて下さいました。

油を引いて、その上に生地をとろーり。
じりじり焼いていくと、サフランの香りがふんわりと広がります。
そこに、黒砂糖をたっぷり。熱で溶けていく黒砂糖が少し焦げてきて甘い香りが。
おやつの完成を待つ子供の気分でワクワクしました。

生地の中に、サフランの花芯がちらりと見え、鮮やかな黄色に、可愛いアクセント。

熱々出来立てのじり焼きは、地粉ならではのもちもち感があり、サフランと黒砂糖の香りが、ふわぁっと口の中で開花します。
卵も牛乳も入っていないのに、サフラン効果で、まるでパンケーキのような洋菓子の美味しさ。
おもてなし竹田郷土おやつに、サフランじり焼きはピッタリなのではと感じました。

どこか懐かしく、でも、新しい味。
夢中になって食べていると、阿南さんは何枚もじり焼きを焼いて下さって、「実はね・・・今日来てくれるから作ったのよ。」と、お家で採れたむかごのごはんや四方竹の煮物など旬の美味しいものをどんどん出して下さいました。

なんてあたたかいおもてなし!
次に伺うときは、「ただいま」と言ってしまいそうです。

ところで、阿南さんご自身が幼い頃食べていた想い出のじり焼きとは?
続きは、後編でお届けします。

    

記事:齊藤美絵(ツタエルヒト。フードマエストロ)
写真:竹田市観光ツーリズム協会、 齊藤美絵